「まぁ、確かにね……」


菊ちゃんはシュンとしたように肩を落とし、


「芦屋先生って何考えてるか分かんないっていうか……物静かだし優しいんだけど、なんかなぁ」


と眉を寄せた。


「分かるよ。先生の話し方ってすごく穏やかなんだけど、本音を隠してる感じがするよね」


「そうそう!それだ」


私の言葉に何度もうなずいた菊ちゃんは、ふと思い出したように


「そういえば、芦屋先生って美術部の顧問になったみたいだよ。堀川先生やってたから、全部引き継いだらしい」


と教えてくれた。


「そっかぁ……。美術部の部員なら先生とたくさんお話できそうだね。うらやましいなぁ」


思わずうらやましいとか言ってしまった自分に驚いて、そしてなんとなく恥ずかしくなる。


でも菊ちゃんはそんな私のことはまったく気にする素振りを見せず、「そうだね」と笑った。