ついでに悲しいお知らせとばかりに、この間三枝先輩が他校に彼女がいることが噂になり、菊ちゃんはとても悲しんでいた。


菊ちゃんが言うには自分にとって三枝先輩は好きというよりも憧れの先輩であるものの、学校生活を送る上で欠かせない存在だったらしい。


「萩の方は?あれから何かあった?」


あっという間にパンを平らげた菊ちゃんはパックジュースを飲み干し、ごちそうさまと手を合わせたあとで私に尋ねてくる。


私は苦笑いを浮かべて首を振った。


「なんにも。でも逆に何かあったら変だもん。卒業するまで、ずーっとこのままだと思うから期待には添えないよ」


「分かんないじゃん。先生と生徒の禁断の恋!みたいな感じ……ドラマみたいだけど憧れない?」


菊ちゃんはかわるがわる表情を変えて、斜め上を見上げてうるうると目を潤ませてみたり、普通に戻ったり。
見ていて飽きない。


彼女の言う「先生と生徒の禁断の恋」は、私の身には絶対に起こらないと断言できるぐらいありえないことだと思った。


「考えてもみてよ。芦屋先生だよ?そういうの全然興味無さそうじゃない?」


そもそも彼には恋人がいるかもしれないし、好きな人がいるかもしれない。
むしろ結婚してたりして。


でもそういうことを聞き出せるほど仲が良いわけでもない。