ただ、私の心は気持ちを伝える前とは打って変わって、本当に自分でも驚くくらいすっきりしていた。
もう伝えるだけのことは伝えたし、やれるだけのことはやった。
芦屋先生のことを好きになった最初の頃は、見ているだけでいい、叶わなくたっていい、ってそればかり思っていたはずなんだ。
その頃の気持ちに似たような感覚になっていた。
このまま先生との記憶は私の思い出の一部になって、来年卒業したあとは進学先の専門学校か大学で、同級生なんかと恋するんだ、きっと。
高校生のうちは、新しい恋はしない。
どうせ学校に行けば芦屋先生がいるんだし、新しい恋なんて出来っこないのだ。
私はこの日から、去年から身につけていた先生にもらったネックレスをつけるのを辞めた。
そして、大事にしていた赤いとんぼ玉のストラップも外す。
もう、無になるんだ。
今日から私は、無になる。
何も考えずに友達との時間を楽しんで、部活に打ち込んで。
将来の目標のために勉強に集中することにした。