斜めがけの小さめのバッグを肩にかけて、お父さんたちに「いってきます」と声をかけて家を出た。


日曜日の街はいつ行っても混雑していて、特にお昼時となれば人気のあるお店は行列が出来ていたりする。


澪と休みの日にどこかへ出かけるというのは初めてだったけれど、どうせ話がメインになるだろうからゆっくり話せるようなお店に行きたいと思っていた。


彼女と決めた待ち合わせ場所にはまだ澪は来ていなくて、私は腕時計で時間を確認して何をするでもなくそばにあったベンチに腰を下ろした。


ここは色んな人たちの待ち合わせ場所になっていて、他にも誰かを待つ人で賑わっていた。


少し待った頃に、澪が現れた。


「萩!ごめんね、待たせちゃって」


急いで来たのか息を切らしている。


「ううん。大丈夫だよ」


と、立ち上がったところで澪の隣に誰かがいることに気がついた。


2ヶ月ぶりに見る、徳山先生だった。


「と、と、徳山先生!」


あまりにもびっくりしすぎて、私は先生の顔を穴が開くほど見つめてしまった。


学校ではスーツ姿でビシッと決めている徳山先生でも、休日はデニムなんかを履くんだ……と無駄にファッションをチェックする私。


「久しぶり、吉澤さん」


徳山先生は変わらず、クールな表情で私を見下ろしていた。


でも、心なしか前よりは表情が柔らかい。


それは学校を辞めたからなのか、私に少しでも心を許してくれているからなのか、それは分からなかった。


「勝手に連れてきちゃってごめんね。萩には透のこともきちんと話したかったから」


澪はそう言って私に微笑んだ。