先生がいつか他の人を好きになるかもしれない。


別れるということはそういうことだ。


先生に新しく彼女が出来たとしたら、笑って祝福できるようになるのかな。


普通なら、好きな人が幸せになるのを喜ばなくちゃいけないんだと思う。


でもそこまで寛大になれなかったし、大人にもなれなくて。


想像しただけで涙が出た。


先生が私以外の人に「好き」だと伝え、キスをするなんて、そんなの嫌だった。


でも先生の意思はとてもかたくて、私の力では揺るがすことすらもできなくて。


私の反論はすべて先生がきれいに飲み込んで、どこかへ流していった。


私だけが先生のことを好きみたいで、なんだか無性に虚しくもなった。


愛しそうに、優しく笑う先生はもうどこにもいなかった。


恋人という魔法が解けて、1人の生徒に戻ったようだった。


そもそも、魔法にかかっていたのは私だけだったのかもしれない。


それでも私は先生のことが好きだったし、私なりに気持ちを伝えられていた。


ただそれはもう、過去の話。


今は私と先生は、先生と生徒。


それだけの関係に戻ったんだ。









私は先生に「ありがとう」という言葉さえも伝えられないまま別れた。