初めて見る、先生の悲しそうでつらそうな顔が私の胸を締めつけて、苦しい。


「学校で萩がみんなの好奇の目に晒されるようなことがあったら、俺は絶対に耐えられない」


私は平気なのに、私のことなんて心配しなくていいのに、先生は私のことしか考えていなかった。


目の前でこんな顔をされてしまったら、私には何も言えない。


「別れよう、萩」


先生の唇が動いて、乾いた響きのある言葉に変わる。


「距離を置くんじゃダメですか?」


泣いちゃダメだと思えば思うほど、涙がこぼれそうになる。


私の言葉は先生にはまるで届いていなくて、表情をまったく変えることはなかった。


「まだ17歳だから、違う恋をしたくなった時はしてほしい」


また見せた、先生の初めての顔。


私を子供扱いした。


「まだ17歳って何?もう17歳だもん!他の人のことなんか好きになれないよ」


違う恋なんて出来るはずもない。


私の想いを載せた言葉を先生が飲み込んでいく。


「先生も……違う誰かを好きになっちゃうの?」


「……そうかもしれないね」


私の悲痛な問いかけに対して、先生はうなずいた。


目の前が真っ暗になりそうなくらい、心が痛くて切ない。


どうにかしたくても、どうにも出来ないのが私と先生の関係。


先生と生徒という関係。


泡のような、消えたらどこにあったのかも分からないくらい淡い関係。