私が部活を終えたあとでも、携帯に先生からの返信メールは来ていなかった。
こんなに仕事が忙しいのに話がしたいだなんて迷惑だっただろうか。
菊ちゃんには今日は一緒に帰れないと伝えていたので、私は1人で校舎に戻って職員室へ向かった。
職員室にはまだ煌々と明かりがついていて、先生たちもたくさん残っていた。
そっとのぞいた職員室の中では、芦屋先生も仕事をしているようで何か書類を広げて書いているようだった。
忙しそうだし、やっぱり今日は会わない方が良さそうだと思い身を翻そうとした時、暗闇から声をかけられた。
「まだ残ってたの?誰か先生に用かな?」
思わずビクっと体を震わせてしまった。
「驚かせてごめんね」
と謝る人影をよく見てみると、新任の国語教師の玉木先生だった。
玉木先生はとても優しそうな目をしていて、控えめな印象で……私とは違う大人な雰囲気。
「大丈夫です。すみません。もう帰ります」
私は急いでそれだけ言ってその場を去ろうとしたけれど、玉木先生に呼び止められる。
「いいの?呼んであげるよ」
「い、いいです、ほんとに」
あまり会話をしていると職員室の中にいる先生たちに変に思われる、と断り続けていたら、ガラッと音を立てて職員室のドアが開いた。
高野先生が不思議そうに私を見下ろしていた。
「なんだ、吉澤。まだ残ってたのか?早く帰りなさい。下校時刻過ぎてるぞ」
高野先生の大きな声で、肩越しに芦屋先生が振り向いたのが見えた。
驚いた顔をして私を見ていた。



