普段あまり怒ったりしない私でも、さすがにそれは言い過ぎだと頭にきた。
ギュッと両手を握りしめて、立ち上がろうとした。
「待って」
芦屋先生がいつもより強い口調でそう言った。
その「待って」が、私に向けられているというのは数秒経ってからわかった。
明らかに私の方を見て言っていたのだ。
立ち上がろうと力を込めた体が、ゆっくり緩められていく。
芦屋先生は私が言い返そうとしてやめたのを確認したあと、さっきの女子生徒の方に向き直って、
「人を傷つけることを言う人は授業を受けなくていいよ。今すぐ出ていってもいい」
とハッキリとした声で告げた。
先生が誰のことを言っているのか分かっていたので、クラスメイトたちが彼女に視線を送る。
発言をした張本人は、黙って下を向いてやり過ごしていた。
芦屋先生の目を見れば分かる。
あんなに穏やかな先生が、とても怒っていた。
「ちゃんと考え直して、授業に取り組んでください」
と言って彼女から視線を外した芦屋先生は、そのあとはいつもの先生に戻っていた。



