こころ、ふわり



美術室に入ると、始業前だというのに珍しくすでに芦屋先生がいて、授業の準備をしていた。


澪と若菜が隣同士に座り、私はその後ろの席についた。


今日の授業では、版画を作ることになった。


彫刻刀で彫ったりするので時間がかかるため、今日1日で終わらせるのは難しいから次回の授業までにすべての工程を終了させるように言われた。


題材は、思い出の写真。


「小さい頃に撮った写真でもいいし、友達同士で撮った写真でもいい。もちろん風景画でもいいし、飼ってるペットでもいい。自分の思い出に残っている写真を頭の中で思い浮かべながら下絵を描いてみて」


芦屋先生が説明を終えると、後ろの方でボソッと女子生徒の声がした。


「じゃあ私、徳山先生とあの人のツーショット写真にしよーっと」


わりと静かな室内でつぶやいたので、その声は芦屋先生の耳にも届いたらしく表情を曇らせていた。


私のいる位置からは澪の顔は見えなかった。


ただ、隣に座る若菜が彼女を心配そうに見つめているのは見えた。


たった一言で室内が少し凍りついたみたいにシンとした。


つぶやいた女子生徒の周りの子たちだけがケラケラと笑っていた。