こころ、ふわり



その日のホームルームに、澪は戻ってこなかった。


星先生の指示によってホームルームの時間はクラスメイト同士で自己紹介をすることになり、それぞれ名前や所属する部活を話したり、休みの日に何をしているかとかそんな他愛もない話をした。


若菜は積極的に私に話しかけてくれて、やや人見知りの私でもすぐに打ち解けることが出来た。


話をしていて分かった。
驚いたことに、若菜は美術部の部員だった。


「美術部の顧問って芦屋先生だよね?」


思わず私が確認すると、彼女は「そうだよ〜」とニッコリ笑っていた。


「あ、もしかして萩って芦屋先生に憧れてるとか?」


と、いきなりそれっぽく見破やれてしまい、私は急いで否定した。


「ううん!全然!好きな人いるし!」


適当に言い訳してから、ほんの少し後悔する。


他に好きな人なんているはずもないのに。


「あ、そうなんだ。芦屋先生も好きな人いるって言ってたなぁ」


若菜の言葉が、私の胸に突き刺さる。


私も先生も、とりあえず見繕う言い訳は「好きな人がいる」。


そんな共通点ですら、なんだか切なく思えた。