私が廊下へ出た時にはもう澪の姿はどこにも無かった。
どこへ行ったのか、心当たりなんて無い。
それでも探さなきゃ、と生徒もまばらにしかいない廊下を進んだ。
少し考えて、もしかしたら徳山先生がよく出入りしていた資料室にいるかもしれないと思いついて階段を降りる。
いるか分からないけれど、とにかくのぞいてみよう。
そう考えながら階段を降りていると、踊り場で誰かにぶつかってしまった。
その場に尻もちをつきそうになってしまったところを、その人に腕を掴まれて難を逃れる。
見上げると、芦屋先生が少し驚いた表情で私の腕をつかんでいた。
「あっ、先生」
久しぶりにちゃんと顔を見た気がした。
いつもみたいに胸がドキッと震えて、自分の顔が一気に火照る。
もう何度も見つめ合った、先生の焦げ茶色の瞳が私をとらえる。
「もうホームルーム始まるよ。こんなところでどうしたの?」
先生は掴んでいた私の腕から手を離すと、心配そうに顔をのぞき込んできた。



