私は周りに人がいっぱいいたのでその場では答えられず、菊ちゃんを引っ張り出して玄関口へ連れてきた。


そして無言で靴を履き替えると、そのまま2人でグランドを抜ける。


菊ちゃんはいまだに衝撃が抜けないようで、興奮が冷めやらない感じだった。


「萩は……知ってたんだね」


と彼女に言われ、私は小さくうなずいた。


「実は……去年の秋、たまたま学校内で2人のことを見かけて。それをきっかけに知ったんだ」


「そうだったんだ。昨日から徳山先生がいないのは今回のことが原因なのかなぁ」


「澪も昨日からいないみたいなの」


私と菊ちゃんは顔を見合わせてしばらく黙り込んだ。


「どうなっちゃうんだろうね、あの2人……」


菊ちゃんの言葉は、まさに私も思っていたことだった。


芦屋先生なら、職員室などで何か聞いているだろうか?


さすがに澪に直接連絡するのは気が引けたので、夜にでも先生に電話してみようと思った。