「嘘……」


というつぶやきと共に、菊ちゃんが言葉を失っているのが視界に入った。


なんとか目を凝らして拡大コピーされた写真を見る。


その写真は、徳山先生と澪のツーショット写真だった。


澪が徳山先生の肩にもたれながら、手を繋いでいる写真。
場所はおそらく、修学旅行の時のホテルの入口あたりだと思う。


徳山先生と澪以外の誰かという説明はつかないほど、鮮明なものだった。


「これ撮った人、天才だな」


と、どこかで嫌味っぽく男子生徒が笑っているのが聞こえた。


修学旅行のあの夜、1泊目なのか2泊目なのかは分からない。


それでもこの写真によって、2人が付き合っていることくらいは容易に想像できるくらいの力を持っていた。


私は写真を見つめたまま、何も考えられなかった。


2人の関係が知られてしまった。


澪のことを知らない人もたくさんいるだろう。
それでも徳山先生の彼女というだけで特別な存在になっていた。


「ね、ねぇ萩!この子が徳山先生の彼女だったの?」


菊ちゃんが驚いたように目を丸くして私に聞いてきた。


私が澪と仲良くなったのは菊ちゃんも知っている。
菊ちゃんには実行委員会で意気投合したと説明していた。


本当のきっかけは誰にも話していなかった。


あの2人がなぜ旅行先のホテルから抜け出したのかは分からない。
何があったのかまったく想像もつかなかった。