3月。
いよいよ修学旅行の日がやってきた。
この2泊3日の旅行のためにどれだけの労力を費やしたか分からない。
前日の放課後は遅くまで残って、実行委員と先生たちで入念に打ち合わせをおこなった。
お父さんに借りた黒のキャリーケースに詰め込んだ2泊分の荷物は、余計なものは入れていないはずなのにパンパンだった。
「3月の北海道をなめちゃダメよ」
と、お母さんが大量のホッカイロを持たせてくれた。
北海道に行くのは初めてだった。
1日目は札幌駅周辺を散策して、そこから小樽へ行く予定だ。
私のいるクラスは担任の星先生と、副担任の先生、それから徳山先生が引率してくれることになっていた。
行きの飛行機で、ちゃっかり星先生が徳山先生の隣をキープしている姿を見て、なんとなくうんざりしてしまう。
それは菊ちゃんも同じようで、私の隣で
「なーんか星先生の態度おかしい〜。新婚のくせに徳山先生に浮気してる感じ」
と遠くの2人の先生を眺めていた。
そして私が持っている北海道のパンフレットをのぞき込み、ワクワクしたように描くになった。
「明日の自由行動がなによりも楽しみだなぁ」
2日目は小樽のホテルから再び札幌市内へ戻り、そこから各グループで自由行動となる。
夕方にまた再集合したら今度は全員で函館へ向かい、函館のホテルに泊まるのだ。
小樽と函館は、高野先生たっての希望で行くことになったということは実行委員のみぞ知る。