それなのに、先生は気にしていないような顔で笑うと


「そういう素直なところがいいんだよ」


と私の髪を撫でた。


「素直なところ?どこが?全然良くないよ」


「俺がいいって言ってるんだから、そのまま受け取って」


こんな嫉妬深いところが良いというのだろうか?


言い返そうとしたら、先生がこれ以上しゃべるなとばかりに人差し指を立てて私を黙らせる。


そして言われた通りに口を閉じた私に、キスをしてくれた。


「これで伝わった?」


と笑う先生の顔がどうしようもなく愛しくて、このキスの余韻に浸りたくなる。


それなのに自分の足に異変を感じてしまって、先生にさっきよりも強い力でしがみついた。


「どうした?」


心配そうな先生を直視できなくて、私は顔を伏せた。


「すみません……。足が震えてうまく立てないです……」


「えっ?今のキスで?」


びっくりしたような先生の顔を見ていたら、自分がいかに恋愛初心者かというのが伺える。


そして先生はひょいと私の体を持ち上げてくれて、ソファまで運んで座らせると


「ここで大人しく待ってて。今カレー持ってくるから」


とキッチンに戻っていった。


キスとお姫様抱っこの2つを短時間に体験した私は、もはや放心状態だった。