「なぁ、おはぎ」
芦屋先生がまだ話しているというのに、隣の真司が話しかけてきた。
私は顔を前に向けたまま、「なに?」と尋ねる。
おそらく真司は美術に興味が無いようで、芦屋先生の授業にも興味が無いのだ。
だから退屈なのか、暇つぶしに話しかけてくるのだろう。
「ちょっとこっち向けって」
「やだ。授業中だよ」
「おはぎ」
真司に付き合いたくなかったものの、あまりにしつこく話しかけてくるので仕方なく彼の方を向く。
するといつの間に私のペンケースを手にしたのか、鉛筆を取り出して指先でペン回しを披露した。
「わ、すごいね」
思わず目を奪われていると、彼は得意げに笑った。
「おはぎにも教えてやろうか」
「うん!……あ、でも今度でいい」
「今教えるよ」
「え、いいってば」
こんな会話を繰り広げていると、気づいたら目の前に芦屋先生が立っていた。
私はハッと我に返って先生を見上げる。
注意されてしまうかと思いきや、芦屋先生はとても楽しそうに笑っていた。
「ずいぶん仲良しだね」
違います!!
と、全身で否定したかったけれど、そんな隙もなく。



