バレンタインデーの一件が落ち着き、芦屋先生の大人の対応にも感動したけれど、自分の子供っぽさも実感した。


そのままの私でいいと先生は言ってくれた。


でも、少しずつでも私も先生に追いつきたいと思っていた。


それから私が口裏を合わせたおかげで、菊ちゃんは無事に土曜日の夜に村田くんとお泊まりしたらしい。


報告メールの最後に、


『もし萩が先生とお泊まりする時は、うちに泊まってることにしていいからね』


と、なにやら可愛らしい絵文字付きでこんな文章が送られてきた。


動揺して1人で部屋で咳き込んだあと、私は出かける準備を始めた。


日曜日。


この日は芦屋先生と行こうと約束していた、クロード・モネの展覧会だった。


私はずっと楽しみにしていた。


画集を先生に借りた時に、載っていた絵はほとんど覚えている。


今日それを実際に見れるなんてこんな機会は滅多にない。


身なりを整えてから、以前も着用したニット帽とマスクに加えて伊達メガネも準備した。


それらをすべて身につけて、家を出た。