「なにも隠す必要なんて無いんだよ」
私の作業を手伝いながら、芦屋先生は小声で声をかけてきた。
「……はい」
私はうなずきながら、嘘をつこうとしてしまった自分を後悔した。
どこかで後ろめたさが残っているからこんな考えをしてしまったのかもしれない。
そして私がそう思っていることを、先生はお見通しだったのだ。
「ほら、これで完成」
気づいたらほとんど先生に作業をお願いしてしまっていて、コロンとしたフォルムの小さな赤いとんぼ玉が完成していた。
芦屋先生が作ったとんぼ玉は、淡い水色と濃い青が混ざり合った綺麗な色合いのものだった。
その完成したとんぼ玉はそれぞれ好きなものに加工できるということで、私はストラップにしてもらった。
先生のとんぼ玉はかんざしになっていて、それをそのまま私にプレゼントしてくれた。
「わぁ、綺麗」
私が感動していると、
「かんざしって、あまり用途ないと思うんだけど」
と先生が笑うので、すかさず言葉を返した。
「来年の夏祭りに、浴衣に合わせて髪にこれつけます!一緒に行きましょう」
来年のことなんて遠すぎて笑われるかと思ったけれど、先生は嬉しそうにうなずいてくれた。
「そうだね。楽しみにしてるよ」
恋人なら当たり前の会話かもしれない。
それでも少し前の私を思い出すと、この会話は奇跡だと思った。



