「館内のレストランに行こう」


芦屋先生は笑いがおさまらない様子で、時折思い出し笑いをしていた。


「引かないでくださいね……」


初めてのデートでお腹が鳴った記憶しか残らなかったらどうしよう、と私は気分が沈んだ。


「いや、楽しいよ」


「本気で言ってますか?」


どうにも先生の返答が信用できず、私は半泣きで口をとがらせた。


「まぁ、お腹が満たされればプラス思考になると思うから」


芦屋先生はそう言って、私をレストランに連れていってくれた。











レストランでは私も先生もオムライスを注文し、料理が届くまでの間も私のお腹はずっと鳴っていた。


鳴るたびに先生が大笑いするので、今度からこっそりチョコレートでも持ち歩こうと密かに決意した。


オムライスがテーブルに来てからは、それはもう至福の時で、私のお腹は満たされて充電も完了した。


むしろ先生より私の方が先に食べ終わってしまい、少しも女の子らしさをアピールすることは出来なかった。


「ご馳走するよ」


と会計を先生がさっさと済ませてしまい、レストランの外で私は自分のお財布からオムライス代を払おうと必死に食らいついた。


それでも先生は頑なにお金を受け取ってくれなくて、


「いつかバイトでもするようになったら払って。これくらい社会人らしいことさせてよ」


と首を振るばかりだった。