3人で教室に戻る廊下を歩くなか、私は菊ちゃんに部活を休むことを伝えた。


「クニコ先生が部活は休めって言うから休むね。あとで翔子先輩にも伝えに行く」


翔子先輩というのは、主将をつとめる3年生の先輩のことだ。


菊ちゃんは思い出したように


「あ、翔子先輩ね、今朝萩が倒れた時に見てたから知ってると思うよ。部活の時に私から伝えておくから大丈夫」


と言ってくれたので、その言葉に甘えることにした。


「そういえばさ」


不意に菊ちゃんが私の顔をのぞき込む。


「新しく来た先生、萩のこと知ってるみたいだったよ」


「……え?」


一緒何のことかよく分からなかったけれど、菊ちゃんが言っている新しく来た先生というのはおそらく芦屋先生のことだ。


「なんで?」


びっくりして聞き返す私に、菊ちゃんは首をかしげて悩ましげに答えた。


「萩が体育館で倒れたあとさぁ、壇上にいたのに心配して降りてきて。吉澤さん大丈夫?って私に話しかけてきたの。だから萩のこと知ってるんだなぁって思って。でも、萩はあの先生のこと知らないんだよね?」


「う、うん……」


どう答えていいか分からず、私は曖昧にうなずくことしかできなかった。