さすがに車の中だし、と思いマスクも外すとすぐに芦屋先生が私の顔をまじまじと見つめてきた。
内心ドキドキしながら自分の頬を両手で覆った。
「な、なにかついてますか?」
「化粧してる?」
「え?あ、はい」
先生がそんなことに気づくとは思っていなかったので、私は少し驚きながら彼を見た。
一応、メイク道具は一式持ってはいるものの、学校では化粧禁止だからほぼ出番は無い。
せめてデートくらいはと思って、薄くファンデーションを塗ってほんの少しアイメイクしただけだった。
「雰囲気違うね。大人っぽいっていうか、可愛いね」
芦屋先生はいつも通りの穏やかな表情でそう言って微笑んでいたけれど、私は自分の胸の鼓動がどうにもならずにただ顔を赤くするばかりだった。
「変なこと言ってごめんね。俺の言うことにいちいちそんな反応されると、こっちまで照れてしまうよ」
あはは、と笑いながら先生はのんびりとした口調で言っていた。
「そうですよね、すみません」
慌てて謝った私は、足元に置いている紙袋を見やる。
数日前に先生に贈ろうと思って百貨店で購入した、ボールペンとハンカチ。
高校生だしバイトもしていないので、高価なものは買えなかったけれど、一応クリスマスプレゼントということで。
今思い返せば、今まで散々先生には助けてもらったし迷惑をかけた。
それなのに私は何もお礼が出来ずにいたから、日頃の感謝も込めて。



