「あいつさぁ、あんなんだからダメなんだよね」
自転車で走り去る真司の後ろ姿を眺めながら菊ちゃんがつぶやく。
真司は確かに学校ではあんな感じだけど、2人でデートした時はとても頼りになったんだけどな。
でもそれは菊ちゃんには言わなかった。
その日の昼休み。
お弁当を食べ終わって美術の授業の準備をしている時に、カバンの隙間から芦屋先生に借りたクロード・モネの画集が見えた。
昨日までの土日に何度も目を通したので、先生に返さなくてはと思い持ってきたのだ。
カバンから画集を出して、スケッチブックの間に挟む。
すると、クラスメイトの男子に「おはぎ」と声をかけられた。
画集を見られたと思ってビクッと肩が震えてしまった。
別に見られたってなんの問題もない画集なのに、変に意識してしまっていた。
「6組の相川って人が呼んでるよ」
そう言われて私が教室のドアを見ると、澪が手を振っているのが見えた。
「ありがとう」
私はお礼を言って、澪の元へ向かった。



