こころ、ふわり



「おはよ」


真司はいつも乗っている自転車を降りて、わざわざ私たちの会話を聞いていたらしい。


「朝からうるさいね、お前らって」


ニヤニヤと笑みを浮かべる真司を、菊ちゃんが容赦なく睨みつける。


「女子の会話を盗み聞きするなんてモテないよ?」


「まぁまぁモテてますけど、俺」


なんという会話をしているんだ、と私はあえて何も発言せずに2人のやりとりに耳を傾ける。


ヒートアップした菊ちゃんが、真司の目の前で人差し指をつきつけた。


「好きな子に振り向いてもらえないんだから、他の子にモテたってしょーがないじゃない」


途端に真司は言い返すことが出来なくなったのか黙り込む。


菊ちゃんは清々したという顔で私に、


「ね、萩。そう思うよね?」


と同意を求めてくる。


ここで私にそんなことを聞かれても困る。
菊ちゃんは全部知ってるくせに。


「上田の彼氏、本性知らなくて可哀相だな」


真司は捨て台詞をはいて、自転車にまたがる。


菊ちゃんの反論より先にいなくなってしまった。