こころ、ふわり



何回かこのやりとりを繰り返して、ようやく理解してくれた菊ちゃんは落ち着きを取り戻した。


そして、


「でも普通に考えたら生徒を家に泊めるなんて、好きでもない限りしないと思うけどなぁ」


と首をかしげた。


「考えてもみてよ?芦屋先生だよ?他の子でも同じようにすると思わない?」


私がそのように言うと、菊ちゃんは「思わない」と返してきた。


「私ね、芦屋先生って誰にでも優しいわけじゃない気がするんだよね。けっこう萩のことは気にかけてくれてると思うよ」


「え?どのへんが?」


思わぬ菊ちゃんの分析に、今度は私の方が納得がいかない。


だって、いつも芦屋先生はみんなに公平な態度で接している気がしていたから。


「1番感じたのは、萩が野球部のボール当たって怪我した時かな。すぐに駆けつけてきたし、保健室に萩を運んだあと野球部の顧問に、外部の生徒がこれから絶対に怪我しないようにしっかり対策を立ててください、って言いに言ってたんだから」


「え!野球部の顧問って……」


「そ。高野先生」


菊ちゃんの話は初耳だった。


相手はあの怖い高野先生。
よく芦屋先生がそういうことを言えたなぁと感心してしまった。


「芦屋先生ってことなかれ主義だと思ってたから、抗議とかするんだってすっごい意外に感じたんだ。しかも高野先生だしね」


菊ちゃんの言うことは間違っていない。


芦屋先生はことなかれ主義という言葉がピッタリだと思った。


授業中に生徒達がおしゃべりしていても注意しないし、争いごととかが苦手なのだろうと思っていた。


私のためなのか、生徒全体のためなのか。


そのへんはやっぱり不透明な気がした。