芦屋先生の目が私の目をとらえる。


先生の目は何かを考えているような、そんな目だった。


どんなことを言われるのか怖かった。


でも、それでもこの不安は、先生に伝えなければダメだと思った。


「吉澤さんはいつも他の人を優先して物事を考えていて偉いね」


先生は私を見つめたままそう言うと、


「俺が泊めたいと思ったからそうしただけなんだけど、後ろめたい気持ちがあるならやめよう」


と告げた。


「今からでも誰か友達の家に泊まれないか聞いてみよう。そこまで送っていくから」


芦屋先生はそのように続けて言って、私にいつものように笑いかけてきた。


「それならいいよね?」


私はしばらくの間、先生を見たまま返事が出来なかった。


先生に言われた通りに、ここはうなずいてすぐに菊ちゃんにまた電話をかけなければいけない場面なのだ。


分かっている。


自分から言い出したことだから。


それなのに、返事が出来ない。