その時、窓の外でガラスかなにかが割るような大きな音が聞こえた。


あまりに突然聞こえたので、私は思わず反射的に隣にいた芦屋先生の服の裾を掴む。


「家の中にいれば安全だから。安心して」


先生は私にそう言って、優しく微笑みかけてくれた。


でも、そんな優しい顔を見ていたら胸が苦しくなった。


「先生」


私はギュッと先生の服の裾を掴む力を強めて、先生の目をまっすぐに見つめた。


「今日……本当に私、泊まって大丈夫ですか?」


「え?」


びっくりしたように芦屋先生の目が見開く。


「だって、私は先生の生徒です。本当はこんなことダメですよね。もしも学校に知られたら、先生に迷惑がかかっちゃうから」


芦屋先生はとても優しい。


だからきっと私を泊めてくれるんだよね。


でもその優しさで先生が危うくなってしまうのなら、私の存在は無い方がいいはずなのだ。