「先生って家でも絵を描いたりするの?」
話題を変えようと、まったく違う質問に変えてみる。
芦屋先生は特に迷惑がったり、困ったような顔をすることもなく
「時々描くことはあるよ。もうひとつ廊下の方に部屋があるんだけど、何かを作ったり絵を描くときはその部屋でしてるんだ」
と言った。
「その部屋見てみたい!」
私が即座に希望すると、ここでようやく先生が涼しい顔を崩す。
「いや、すごく散らかってるし。大したものも描いてないし」
先生の少し焦った顔。
「私、先生が描く絵がすごい好きなんです。見たいです!」
芦屋先生がプライベートで描いている絵を見るチャンスは、きっと今後もう無い。
だからこのチャンスを逃したくなかった。
先生は私の勢いに押されたのか
「そこまで言うならいいけど……期待しないでね」
とうなずいてくれた。



