シャワーを浴びたあと、洗面所のドライヤーを借りて髪を乾かす。
ようやく体がホカホカと温まった気がした。
洗面所の鏡に映る自分を見つめた。
前に芦屋先生に言われた言葉。
「吉澤さんは、笑ってる方がいいね」
そうだ。
笑わなきゃ。
自分の頬を両手で包んで、目を閉じて心を落ち着かせる。
私は洗面所を出て、リビングへ戻った。
リビングに入った途端、とてもいい匂いがしてすぐにキッチンを見る。
芦屋先生がキッチンに立って何か料理を作っていた。
「先生、シャワーありがとうございました」
お礼を言ったあとに、あまりにもいい匂いだったので引き寄せられるようにキッチンに入り込んだ。
「ね、先生。何作ってるの?」
「パスタ」
芦屋先生はニコッと笑ってフライパンを上手に返していた。
「先生も料理とかするんだ……」
私のつぶやきを先生はしっかり聞き逃さなかったらしく、眉を寄せて首をかしげた。
「その反応は味に期待してない感じだね」
「え!?違いますよ!」
急いで否定して、私はフライパンの中をのぞき込んだ。
「お腹空いちゃった」
と、美味しそうな匂いに夢中になってしまった。



