むしろ私のこと覚えているのかな。


覚えていたとしても名前は忘れちゃってるかもしれないな。


いろんなことを思い巡らせているうちに、心臓のドキドキが強くなってきた。


それと同時に頭が一気に痛くなる。


なんだろ、これ?


そんなことを思っていたら、芦屋先生が挨拶を始めた。


「初めまして。芦屋聡です。2年生の美術を担当することになり……」


先生の低くて落ち着いた声がマイクを通して体育館に広がる。


すると、先生の視線が私に向いたような気がした。


目と目が合う。


どうして?どうして私のこと見ているの?


と思っているうちに、あっという間に目の前が真っ白になった。


バターーーーーン!!


大きな音を立てて、私は大の字でその場に倒れてしまった。


「萩!萩ーーーーーっ!!」


菊ちゃんの叫び声とか、他の生徒達のざわめきとか、色々な声が聞こえたけれど、それはすぐに私の耳には届かなくなった。


そこで意識を失った。