こころ、ふわり



スウェットのポケットに入れていた携帯の振動が鳴らなくなった。


私がなかなか電話に出ないので、菊ちゃんも諦めたのだろう。


ごめん、菊ちゃん。
と、心の中で謝った。


寝室から出てきた先生は着替えを済ませていて、窓辺で外を見ている私に


「今回の台風は被害が多そうだね」


とつぶやいた。


「カーテン閉めた方がいいですか?」


「そうだね」


私の問いかけに先生が答えてくれたので、そのまま窓にカーテンをひいて閉める。


「吉澤さん」


芦屋先生がクローゼットから出したのか、新しいバスタオルを持ってきた。


「まだお風呂は溜まってないと思うんだけど、シャワーだけでも浴びてきて。温まるだろうし」


「で、でも……」


なんとなく先生の家のお風呂場を借りるのは気が引けてしまって断ろうかとも思ったけれど、確かに髪の毛もまだ濡れたままだったし、一度綺麗に体を洗いたい気もしたので、借りることにした。


「なにからなにまですみません……」


バスタオルを受け取り、私はまた謝ってしまった。