「着替えた?制服はそのへんのハンガーにかけておいていいからね」
リビングから芦屋先生の声が聞こえて、私は慌てて携帯をスウェットのポケットに突っ込んだ。
「は、はい。ありがとうございます」
菊ちゃんからの電話はまだ鳴っていたけれど、気づかないふりをした。
湿った制服を空いているハンガーにかけた私は、扉を開けて
「終わりました」
と先生に声をかけた。
リビングにいた芦屋先生はテレビをつけて、温かい紅茶を用意してくれていた。
先生は私と入れ違いに寝室へ入った。
きっと同じように濡れてしまった服を脱いで着替えているのだ。
ふと窓ガラスに映る外の風景に目を向けた。
立ち上がって窓のそばまで行くと、外がよく見えた。
木が強い風に煽られて斜めになっていたり、電線が何度も波打っていた。
もちろん、雨の威力は強くなる一方だった。



