先生はすぐに車に戻ってきた。
ほんの少し外に出ただけなのに、着ていたシャツからだらだらと雨のしずくが垂れていた。
さっき芦屋先生に貸してもらったタオルを、先生に渡す。
先生はタオルを受け取ってすぐに電車のことを教えてくれた。
「やっぱり電車は動いてないみたいだ。今日は動かないだろうって」
「そ、そうなんですね……」
どうしよう、と私は困り果ててしまった。
「大丈夫だよ。また家まで送るから」
芦屋先生は当然のように言うと、素早くシートベルトを締めてまた車を動かし始める。
慌てて私は首を振った。
「先生、いいです!遠いし、迷惑かけてるし」
「運転は好きだから。気にしないで」
気にするから言ってるのに。
私の心の声なんて聞こえるはずもなく、先生は運転しながら数ヶ月前にも使った地図を取り出していた。



