すると、芦屋先生が急にラジオの音量を少し大きくした。
「気のせいかな……」
先生はそんなことをつぶやいていた。
「どうかしたんですか?」
疑問に思って尋ねてみると、先生は神妙な面持ちで
「電車が全線運休って聞こえた気がしたんだ」
と言った。
「全線運休!?」
私が不安そうな声を出してしまったからか、芦屋先生は「聞き間違いかもしれないし」と念を押した。
少ししてようやく駅にたどり着いたけれど、駅前のタクシー乗り場に信じられない人数が並んでいるのが見えた。
バス乗り場も同じ。
数人の駅員さんが拡声器で何かを言っているようだった。
雨音でかき消されてよく聞こえない。
「吉澤さん。ちょっとこのまま待ってて。電車動いてるか聞いてくるから」
芦屋先生は車を停車させてから、傘をさして駅員さんたちがいる方へ歩いていった。
もしも電車が運休になっていたらどうしよう。
そんな不安が頭をかすめた。



