「澪との時間を邪魔されたくないんでね」
徳山先生はニヤッと笑みを浮かべた。
そして徳山先生の手が澪の髪を撫でる。
澪は少しくすぐったそうに笑っていた。
「じゃ、お願いしますね」
あ然とする芦屋先生に、徳山先生はそれだけ告げて澪の肩に手を回すと彼女と共に教室を出ていってしまった。
去り際に一瞬、澪が私を見た。
ウィンクしていた。
━━━━━いやいや、ウィンクとかじゃなくて。
私と芦屋先生の間に沈黙が訪れる。
こんな展開になるなんて思ってなかったし、私の頭はパニックになっていた。
「芦屋先生、私は大丈夫です!歩いて駅まで行けますから」
とにかく先生に迷惑をかけてはいけないとそればかり考えて、机に置きっぱなしにしていたカバンを掴むと教室を出ようとした。
「いや、駅まで送るよ」
私の後ろから、芦屋先生の声が聞こえた。
おそるおそる先生の方を振り返ると、先生は穏やかにいつものように微笑んでいた。
「雨も風も強いし、危ないから」
「……はい」
雰囲気に飲み込まれて、私はすんなりうなずいてしまった。



