芦屋先生は私が残っていたことにとてもびっくりしたのか、見つけるなり
「吉澤さん、まだ残ってたの?すごい雨だよ。帰らなきゃダメだよ」
と注意してきた。
「す、すみません」
澪と一緒に徳山先生の車に乗せてもらって、駅まで送ってもらおうと思っていたとはその場では言えなくて、謝るほかなかった。
「芦屋先生と一緒なんて珍しいじゃん」
澪が徳山先生にそう言っているのが聞こえた。
「たまたまだよ。最後まで仕事してたら残ったのが俺たちだっただけ」
徳山先生が答えるその言葉づかいが、いつもと違う。
先生の特徴は、生徒に対しても丁寧な言葉で話すところだ。
自分のことも「私」と言っているところしか見たことがない。
でも澪の前では「俺」と言うし、当たり前だけれど丁寧な言葉なんて使わないんだ。
彼女は恋人だから。
その違いに勝手に1人でドキドキしてしまった。



