体育館へ移動すると、各学年の生徒達が集まっており、それぞれクラスごとに並んでいた。
私はすぐに体育館の端に並ぶ先生達に目を配る。
たくさんの先生達の中から、すぐに芦屋先生を見つけ出す。
彼はいつもの涼しい顔で壇上にいちばん近い位置に立っていて、一番最初に出会った時に着ていたスーツに身を包んでいた。
新任の教師として紹介されるに違いない。
約1ヶ月ぶりに芦屋先生の姿を見たけれど、やっぱり彼を見ると私の胸はモヤモヤして、フワフワした。
そして、芦屋先生から少し離れたところに徳山先生がいることに気づいた。
菊ちゃんも徳山先生を見つけたらしく、なんだか落ち着かない様子で私に
「徳山先生見ると、あの時彼女といたの思い出しちゃうんだけど」
と楽しそうに笑った。
「私も同じこと思ってた」
二人で笑っていると、菊ちゃんはふと何かに気がついたような顔をして私の肩を叩いた。
「ねぇ、あの人誰だろうね?徳山先生の前に立ってる人。新しい先生かなぁ?」
そう尋ねてきた菊ちゃんの視線の先には芦屋先生がいた。
私は慌ててすぐに知らないふりをした。
「私、知らないよ」
「教育実習生とかだったりして」
「違うよ、先生だよ」
「え?」
知らないふりをしていたはずなのに、矛盾している私の言葉で菊ちゃんは混乱していた。
「先生なの?萩、知ってるの?」
「う、ううん!そんな気がしただけ!知らないよ」
明らかに動揺しているのは自分でも分かったけれど、とにかくこの場では私は知らないということをつき通した。



