とはいえ、先生の手元ばかり見ていたらまたほとんど白紙のまま提出することになりかねないので、私は画集の絵を元に下描きを始めた。
相変わらず私語が多い美術室内で、私と菊ちゃんは黙々と絵を描いていた。
途中で隣から「う〜ん」とか「ん?」とか、ひとり言が頻繁に聞こえるようになり、菊ちゃんの真剣さが伺えた。
下絵を描き終えた時に、チラッと教壇の芦屋先生を見やる。
スケッチブックに描かれている絵を見て、私は呆然とした。
何度も自分の下絵と、先生の絵を見比べる。
先生は下描きもせずに絵の具で直接スケッチブックに絵を描いていた。
私と芦屋先生が描いている絵が、まったく同じ絵だったのだ。
クロード・モネの「散歩、日傘をさす女」。
思わず先生の後ろ姿を見つめてしまった。



