騒がしい美術室内でみんながだいたい好きな絵を決めた頃、芦屋先生が生徒たちに声をかける。
「そろそろ決まったかな?今日みんなにやってもらいたいのは、模写です」
模写?
誰もが首をかしげる中、先生が説明してくれる。
「模写というのは、真似をして写すことを言うんだ。今みんながそれぞれ選んだ絵があると思うんだけど、その絵をぜひ自分で描いてみてほしい」
すぐに何人かのクラスメイトが、嘆きの声を上げた。
とんでもなく真似しにくい難しい絵を選んだ人たちだ。
芦屋先生はそんな生徒たちをフォローするように笑っていた。
「完璧は求めなくていいんだよ。見たままを思うように自由に描いてほしいんだ」
先生の話を聞いてから、私も菊ちゃんも自分が選んだ絵をまじまじと見直す。
なかなか難しそうだった。
また賑やかになる室内で、芦屋先生は自分のスケッチブックを持ってきて黒板に立てかけていた。
「俺も好きな絵を模写してみるので、みんなで楽しく描こう」
最初の授業で手のデッサンを実際にしてくれた時以来の、先生が描く絵。
間近で見られると思うと嬉しくなった。



