「昨日、駅前で見かけたんですが……人違いかと思って」


徳山先生にそう言われた途端に、私の胸がドキンと震えた。


昨日というのは、まさに真司とデートしている時だ。


芦屋先生のことを好きと言っておきながら他の人とデートしていたところを見かけて、徳山先生もきっとびっくりしたのだろう。


「人違い……じゃないです」


消え入りそうな声で答えた私を、徳山先生は何かを言いたげに見ている。


「まぁ、君の自由です」


それだけ言うと、他には何も言葉を続けることもなくその場からいなくなってしまった。


「きゃー、徳山先生に話しかけられて羨ましい!いいなぁ、名前も顔も覚えられてるんだねー!」


菊ちゃんはまったく違うところで大興奮していた。


私はというと、心がざわついて仕方なかった。


徳山先生はおそらく、私と真司が手を繋いでいるのも見ているはずだ。


そんな私をどう思ったのだろう。


少し怖くなった。