午後になり、私と菊ちゃんは美術の授業を受けるために美術室へ向かっていた。


今日はスケッチブックと筆記用具の他に絵の具を持ってくるように言われていたので、それらを抱えて廊下を進む。


その途中、廊下に並ぶ教室のひとつ、資料室から徳山先生が出てくるのが見えた。


一瞬、澪も一緒に出てくるんじゃないかと思ってヒヤリとしたけれど、もちろんそんなわけもなく。


徳山先生は1人だった。


何冊か資料を手に持って、部屋に鍵をかけている。


ふとこちらを見た先生が、私たちの姿に気づくとそばに近づいてきた。


「吉澤さん」


驚いたことに、徳山先生に話しかけられてしまった。


1番驚いているのは、私の隣にいる菊ちゃんだった。


「は、はい」


無意識に背筋が伸びて、私はなるべく声を張って返事をした。