菊ちゃんの視線の先には、人混みに紛れて徳山先生らしき後ろ姿を確認することはできた。


でも顔をしっかり見たわけではないので、その人が本当に徳山先生なのか確信を得るのは難しかった。


でもたしかに徳山先生の後ろ姿に似ていた。


そしてその人の隣には髪の長い女の人が寄り添っていたのだ。


「彼女かなぁ」


私のつぶやきに、菊ちゃんは興奮したように足をジタバタさせたあと、叫びたい声を押し殺したように


「徳山先生、彼女いるんじゃん!見ちゃった~」


と嬉しそうに飛び跳ねた。


「ほんとに徳山先生だった?」


顔を確認できていないので私にはにわかに信じられない気もしたけれど、菊ちゃんはキッパリと「間違いないよ」と断言。


「だってさっき顔見えたもん。彼女の方は見えなかったけど」