「でもね、真司。私……」
頬から真司の手が離れたので、どうしても言いたいと思ってもう一度言おうとすると、真司は首を振った。
「そういうのは聞かない。言わなくていい」
「ほら足も怪我してるし、早く歩けないし……」
「合わせて歩くから気にすんなって。なんならおんぶしてやろうか?」
「はぁ?」
結局いつもの真司のペースに巻き込まれてしまって、肝心の話が全然出来なかった。
しかもこうやって話をしているとまったくもって手が進まず、スケッチブックは白いままだ。
真司は話しながらも鉛筆がよく動いていて、なんだかんだでそれらしい下絵が出来ている。
「場所と時間、大丈夫?」
さっき言われたデートの日時を確認され、私は仕方なくうなずいて見せた。
「うん。大丈夫」
「よし」
真司はようやく満足したように笑顔になる。
このままこうやって彼のペースになってしまうと、デートの時も楽しんでしまいそうな気さえした。



