クラスメイトたちが続々と美術室を出て、風景画のポイントを探しに行く。


「私たちも行こっか」


菊ちゃんに言われて、私も席を立つ。


美術室を出る時に、芦屋先生の方を振り返ってみた。


先生は私たちの方は見ていなかった。


グランドではすでに描くポイントを決めた生徒が数名いて、私も菊ちゃんも決めかねてしばらくウロウロしていた。


さすがに仲の良い私たちでも、同じ場所を描くのは気が引けたのでバラバラに行動することにした。


「あとでじっくり話聞いてね」


菊ちゃんはとても上機嫌な様子で、風景画のポイント探しに軽い足取りで歩いていった。


建物や目立つ植物がある場所は多数の生徒がおり、私はあまり人がいない花壇のあたりまでやってきた。


花壇の隣に紅葉の綺麗なモミジの木があるので、それを描くことにした。


いくつか並ぶ石段に腰を下ろして、スケッチブックに鉛筆でモミジの木を描いていると、不意に誰かが私の手元をのぞき込んできた。


びっくりしてのけぞると、真司がいた。


「驚きすぎ」


真司は私の反応を見て、とても面白そうに笑っていた。