違うよ、先生。


私は芦屋先生のことが好きなんだよ。


ひと目みた時から気になっていた。


少し手が触れるだけでどうしていいか分からないくらい、私は先生が好きなのに。


好きなのに、それは言えなかった。


すぐ近くにいる芦屋先生が、とても遠くに感じた。


簡単に好きなんて言えないよ。


先生のその大きな手で、触れてほしいなんて言えない。


でも少しだけ。
ほんの少しだけ、伝えてもいい?


私は頑張って笑って、言葉を口にした。


「先生の気になる人が羨ましいな」


言った直後にハッとして我に返って、芦屋先生の顔を見る。


先生は私を見ていた。


同じ空間にいるのが急に恥ずかしくなってきて、私は慌てて


「突然来てすみませんでした」


と謝って、先生の反応も見ずに美術室を飛び出した。