芦屋先生には芦屋先生の歩いてきた道がある。


先生が言っている気になる人というのは、私が知らない人かもしれない。


それとも━━━


淡い期待をしてしまった。


その人はまさか私じゃないよね?


でも余計な期待をして、違った時の自分のショックの大きさを想像するとこれ以上は聞けない。


私が黙り込んでしまったため、今度は芦屋先生が尋ねてきた。


「吉澤さんは?好きな人いるの?」


「えっ……」


まさか先生から同じ質問をされるなんて、まったく予想していなかった出来事だった。


答えられず言い詰まっていると、芦屋先生は息をつくようにひと呼吸置いて


「まぁ年頃だし、共学だし、いないわけないか」


と笑った。