「芦屋先生。彼女はいますか?」


聞きたかったけれど、聞けなかった質問。


昨日すでに他の子が聞いた質問。


自分で聞かなければ、意味の無い質問。


やっと言えた。


芦屋先生は私をじっと見つめていた。


ほんの数秒の間なのに、永遠に感じてしまいそうな一瞬の沈黙。


震えそうになる手を、どうにか押さえる。


先生はほんの少し表情が揺らいだ気がしたけれど、気のせいだったのかいつも通りの穏やかな声で


「いないよ」


と答えた。