先生は、美術部員でもないのに突然現れた私に戸惑っているようだった。


美術室には芦屋先生しかおらず、やはりさっきの美術部員らしき生徒たちは部活動を終えて帰るところだったようだ。


私は胸のドキドキを必死に自分でコントロールしながら、平静を装う。


「先生いるかなぁって思って来たんです」


こんなことを言ったらどんな反応をするだろう、と少し怖かったけれど、芦屋先生はいつものように微笑んでくれた。


「吉澤さんは今から帰るの?」


「はい。あの……帰る前に先生と話をしたくて」


私はまた自分の声が少し震えてしまっていることに気づいて、落ち着くよう自分に言い聞かせる。


頑張れ、頑張れ。
頑張るんだ、臆病者の私。


他人の会話を聞いて芦屋先生のことを知ろうとした昨日の自分とは、違う自分になりたい。


私は心を奮い立たせて、芦屋先生に尋ねた。