渡り廊下へ出たところで、美術室の方から数人の生徒がこちらへ向かってくるのが見えた。
その生徒たちの中には、昨日芦屋先生と話をしていた茶髪の女の子もいた。
それぞれみんなスケッチブックや絵画道具を手に抱えていて、これから帰宅するといった雰囲気だった。
渡り廊下の隅へ寄って彼女たちをやり過ごしたあと、私は芦屋先生がいるかもしれないという期待を持って美術室のドアを開けた。
ドアを開けた瞬間、美術室独特の絵の具の匂いがした。
すぐに芦屋先生の姿が目に留まった。
彼は室内の机やイスを整頓していたようで、私を見るなりその手を止めた。
芦屋先生はとても驚いた顔をしていた。
「吉澤さん?どうしたの?」



