澪は私が泣いていることに気づくとすぐに周りから見えないように、歩道の端に引き寄せてくれた。


「私、先生に迷惑かけたくないよ」


自分でも驚くほど声が震えていた。


「先生のこと好きになればなるほど、迷惑じゃないかって思うの。知らない誰かに見られて、先生を困らせたりするんじゃないかって怖い」


私のせいで芦屋先生の今の生活が脅かされることがあっては絶対にならない。


そう思うと、これ以上好きになってはいけないと自分でブレーキをかけていた。


「萩は優しいんだね」


澪は私のことをまるで妹を見るような、そんな穏やかな目で見ていた。


「前にいい子ちゃんしてるなんて言って、ごめん。そうじゃないね。萩は芦屋先生のことを1番に考えてるんだね」


そして、彼女はとても冷静な声で


「でもね、萩は自分の気持ちをもっと大切にして。そうじゃないと、好きな気持ちがもったいないよ」


と言った。