澪と駅まで歩きながら、私は今日の芦屋先生のことを思い出していた。
今日はやけに目が合ったな。
やっぱり昨日のことがあったからなのだろうか。
徳山先生の突き放すようなあの言葉。
「もう少し生徒の気持ちを理解してあげてくださいね。そうじゃないとこの子は自分を責め続けますよ」
徳山先生があんなことを言うから、芦屋先生は私に気を使ってしまっているのではないかと思ってしまう。
「萩?」
ふと澪が私の顔をのぞき込んでいた。
「なんか考え込んでるでしょ。悩み?芦屋先生のこと?」
ニヤッと笑みを浮かべるその表情は、まさに昨日の徳山先生とそっくりだった。
私は否定してもどうせバレているのだからと諦め、笑顔を作った。
「私の場合は澪と違って、片想いだからさ。色々考えちゃうんだよね」
「何も考える必要なんてないんだよ。好きなら好きって伝えちゃった方が、相手にも意識してもらえるよ」
いとも簡単に澪はそう言ったけれど、そういうわけにはいかない。



